90歳を過ぎて 歩行も通院も困難になり
訪問診療にご紹介をいただいた方の中には
それまでの処方薬を減量・中止することで
食欲が回復して笑顔が戻ることもあります。
目次
降圧薬(血圧を下げる薬)
Sさん(93歳)は前医から降圧薬を3種処方されていました。
かつて元気に歩いていた頃は 3種を内服して血圧が良好に維持できていたのでしょう。
しかしベッド上生活となり 食事量も減少する中で
診察時は上の血圧が90台まで低下していました。
ご家族に毎日の血圧を測定し記録していただきながら
段階的に降圧薬を中止したところ 食欲が回復して笑顔が戻り
テレビを楽しむ意欲まで回復しました。
向精神薬(安定剤)
Mさん(90歳)は高度の認知症で
かつては夜間に興奮したり自宅の外まで歩き回ったりする落ち着かない時期があり
眠前に2種の向精神薬が処方されていました。
歩行が困難になり夜間の興奮が収まっても その薬は継続され
飲み込みも反応も低下して 低栄養が進行していました。
当院で診療を引き継いだ後 向精神薬を中止したところ
反応も笑顔も回復してくれました。
かつては必要であったはずの降圧薬や向精神薬ですが
年齢を重ねて全身状態が低下すると
逆に健康を損ねる危険性もはらんでいます。
日々の状態を確認しながら
薬によりご本人の健康や笑顔が奪われることのないよう
その時々に応じた薬剤調整が求められます(院長 神部)
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