ALS診療で出会う辛さ

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は

全身の筋力が低下し 自力での呼吸も困難になる難病です。

現在当院では7人のALSの方々を診療中で

(うち3人が人工呼吸器を装着して生活中)

これまでに8人のALSの方々をお看取りしました。

多くは神経内科専門医と併診体制での診療です。

 

ALS診療では、特有の辛さに出会うことがあります。

Fさん「1日も早く天国に」

言葉の障害が強く出ていたFさんは

筆談で「早く銀河の彼方へ」と

何度も訴えていました。

 

身体的な苦痛を薬で緩和しながら

気持ちの辛さには傾聴することしかできませんでした。

 

Cさん「元のように歩きたいんですよ。どうしたらいいですか?」

全身の筋力が低下し、何度も転倒を繰り返したCさん。

顔から転倒して額を切ったり

奥様が一人で起こせずに助けを呼んだり

安全対策が課題になっていた時期でした。

 

「元のように歩きたい」というCさんに

「そうですよね。そのお気持ちは ごもっともだと思います。

普通に歩いて、食べて、トイレで排泄して…

今まで当たり前にやっていたことが困難になるご病気で

ご不自由をおかけしています」と答えました。

 

「どうしたらいいですか?」の問いには

「いま世界中の研究者が、治療薬の研究開発に取り組んでいます。

元通りに歩けるようになる未来が待ち遠しいですが

残念ながらこの1ヶ月、2ヶ月の話ではなさそうです。

差し当たってこの1ヶ月の間も、

Cさんには安全に生活していただく必要があります」

 

希望を支えつつも、現実にも向き合う。

ご本人も辛いし ご家族も辛い。

どのようにご本人とご家族の暮らしを支えていけるか

模索は続きます。(院長 神部)

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